先輩起業家へインタビュー 株式会社MONOCO 代表取締役 柿山丈博さん
株式会社MONOCO 代表取締役社長 柿山丈博さんのプロフィール
株式会社 MONOCO 代表取締役社長
2009年、株式会社ネットプライスにインターン入社。ebay Japanの日本再進出参画後、在日外国人が目利きした日本の商品を簡単に個人間で国際取引ができるコマースプラットフォーム FlutterScapeスタート。
2010年3月、上智大学卒業後、同年5月にスピンオフ創業。創業4ヶ月で「Asia’s Top 10 Apps」を受賞。
2011年4月、ハーバードビジネススクール主催カンファレンスにて登壇。
2012年4月、デザイン雑貨・家具に特化したECサイトMONOCOスタート。
MONOCO : http://monoco.jp/
柿山さんの起業しようと思ったきっかけを教えてください。
元々起業しようと思ったわけではなくて、会社をどうやって創業したらいいかとか全くわかんなくて…
たまたま金融の仕事に就くことが大学3年生のときにあったんです。
海外の大学でしたっけ?
違います。東京の上智大学です。3年生のときにインターンで外資系の金融会社に入ったんですが、
自分が思っていたところと違ったんですよね。
仕事は単調だったし、何やっているか全くわかんなかったし。
僕にとっては使命感というかやりがいを感じなかったんです。
そんな時に、kivaというサービスを知ったんです。
それはどういうものかというと、発展途上国の起業家と先進国の、いわゆる僕らみたいな人たちをインターネット上でつなぐんです。
ネット上から25ドルその方たちに送金して起業家の方たちがたとえば200ドル集めました。と。
それでピーナッツを買って、ピーナッツバターを作って売ります。
この売って出来たお金を娘2人の授業料に使うっていうプレゼンテーションをするんです。
僕はそれをNHKの50分間のドキュメンタリー番組で見たんですが、ボロ泣きしちゃいました。
すっごいびっくりしたんですよ。
インターネットの決済サービスで人と人とを勝手につないで、発展途上国に経済インパクトが生まれるんだと。
彼らは100億円の出資を募ったんですよ。面白いのが25ドル投資したら、お金は必ず返ってくるんですけどいつ返って
くるかわからないんですよ。利率もゼロなんですよ。
利率はゼロなんですね!?
確実に25ドルはちょっとずつ返ってくるんですよ。さぁ25ドル現金化しようかなと思っても出来ないんですよ。もう1回
再投資しないといけないっていう。一回投資したら現金化できないっていう仕組みで。
そうすると100億のお金っていうのはプールされてる状態。面白いのが先進国にとっては100億ですが、発展途上国にとっては
だいたい10倍くらいのインパクトがあるんですよ。
1000億円規模の経済インパクトを発展途上国にもたらしたというのがわぉーって思って。
びっくりして、僕、インターネットで何かすごいことしたいなってその時に思いましたね。
それまでインターネットに興味はなかったんですか。
インターネットのすごさはもちろん感じてましたよ。
カナダの高校にいってたときにスカイプで無料でお母さんと話が出来たりとか、
若い男の子なんでインターネットでアダルト動画とか共有できるサイトとか…(笑)
ははは。
インターネットにリソースがあるっていうのは気づいてたんですけど、自分の中ではまだぴんと来てなくて。
すごいだけで終わってたんですよ。ちょっと人よりは詳しかったんですけど。
さっきのインターネットのすごさに出会って、僕はインターネットで大きなことを成し遂げたいと。でそこで大失恋があって。
大失恋??!
はい。それで悔しくてずっと本を読んでて。有名な方、例えばリチャードブランソンとか。全部英語だったんですけど1日に3本とか4本とか読んでて、
バイト代も全部それで使いました。
インプットが溜まったなって思ったときに、アウトプットできる機会がきたんです。
たまたまネットプライスの佐藤社長(佐藤輝英社長)がやっていた学生ビジネスチャレンジ略して学チャレっていうのがあったんです。
今なくなっちゃったんですが、学生の起業家応援プログラムがあって。
それでJPモルガンの先輩にこれチャレンジしてみたらって言われたんです。
よっしゃって思って応募しようと思ったんですけど、なんと締切が翌日の朝5時までとかであと3時間しかなくて。
やばい!!ってなって。linkedinってありますよね。あのアジア版をやりたかったんですけど。そういったビジネスをバーって書いて送りました。
いくつもビジネスモデルを書いたんですか。
はい。いくつか。例えば英会話のスクールをオンラインでやるとか。
そもそも18歳のときに銀座で英会話のスクールやっていたので。それをオンラインで持っていったら面白いのかな
とか。言語で横展開をするとかは考えてたんですけど、英会話スクールってベンチャータイプのビジネスには違うのかなと。
linkedinのアジア版の話を持っていったときに、”すごく柿山くんに可能性を感じるよ。”って仰っていただいたんです。
”ただ、ビジネス的には儲かりそうにないから難しいけど、まずは僕のところでインターンで働きなよ”って誘って頂き、入社したんです。
それで僕が最初に担当したプロジェクトが驚きなんです。
なんと、ネット系フォーラムであのKIVAの社長のマットさん(Matt Flannery)と佐藤社長がこれからの国際金融決済システムについて話すから、
そのためのプレゼン資料を作ってくれ。って。
えーーっ!!みたいな。
それすごいですね。
僕その人に感銘を受けてこの業界に入ったんです。絶対にやらせてください!!みたいな。
その後は、ebayの日本に再進出するから君プロジェクトリーダーやりなよって言われて
法人が出来るまでサイトポリシーとかウェブサイトと作ったりとか業務フロー作ったりとか全部やってたんですよ。
そこで色々経験させてもらって、いまの僕らの前身となるフラッタースケープを思いついたんですね。
ebayがお客様に提供しているサービスっていうのは、
お客様が海外で簡単に売れるように個人セラーの方々が世界のオークションに簡単に出品できるように、国際決済システムと国際配送システムを
そして言語のカスタマーサポートを提供する。これだけなんです。
それで僕もやってみたんです。でも僕も日本人なので海外に何を売っていいかわかんなかったんですよね。
在日外国人の友達に色々聞いたんですよ。母国で何が売れますか、日本でどんな商品が面白い?って。
そしたらニューヨークの友達は寒いからコタツとかホッカイロとかめっちゃいいと思うよ。とか、カナダの友達はハイチュウとかああいうのないからいいよとか。
めっちゃ普通じゃんというのを出品していったんです。
そしたら、30品目くらい全部売れて、30%〜50%の利益が出たんですよ。
日本での仕入は店頭で買って来てるんですよ!!
これ、僕だけやってるんじゃなくて皆でやればいいんじゃないのってパッと閃いちゃったんですよ。
その日本人が海外に出品するときの一番の問題は何を売っていいかわかんないんですよ。お客様の顔がわからないから。
じゃあお客様の顔がわかる在日外国人の方が売ったらいいんじゃないのって思ったんです。
それで、在日外国人にiPhoneアプリを配って、パシャパシャと色々撮ってもらって日本の良さを再発掘してもらう、それを発信して
受注があったら発注して送ってあげるっていうのがいけるんじゃないかなと思ったんです。
ebayという大きなプラットフォームで売れるという事は実証していただいて、そのあとに佐藤社長にこういうのやりたいんですけどっていうプレゼンをしたら
呆気なく”いいよ。いくらくらいいるの?”っていわれて、
わかんなかったんですけど、”1500万くらいですかね”っていったら”いいよ”ってなって。
あれ、あれっていう間に
予算ができて社内プロジェクトで始めたのが大学卒業した直後くらいです。
それがフラッタースケープ(flutterscape)ですか?
そうです。
社内ベンチャーから始まるんですが、”柿山くんお金出してくれるんだったら買い取ってもいいよ”って言って頂き、法人化しました。
8割くらいのお金をかき集めてきて2010年5月に買い取らせてもらったんです。
そのフラッタースケープ立ち上げられて、今はMONOCOに業態を変えられていますが、どうでしてでしょうか?
何が原因だったんですか?
フラッタースケープの事業を成長させるうえで、考えたのは結局物売りだということです。それで物を販売するときの3つの要素に絞ったんですよ。
それで検証してみようと。商品、価格、在庫。
つまりお客様の欲しい商品があるかどうか、価格が適正かどうか、欲しい商品の在庫があるかどうかっていうことです。 商品がいいか悪いかっていうのはどこで評価するかっていうのはトラフィックの数だろう。
このトラフィックはユーザー数が増えていくにつれて1週間で5%くらいづつ伸びてたのでこれ売れるねって思ったんです。
トラフィックが1週間でで5%づつ??
トラフィックはかなり伸びてたんですよ。そしたら必然と売れるだろと思ってたんですけど、売れないんですよ。
なんでだろとなってそれを検証してみると、やはり残りの2つの要素に問題があるんですね。価格と在庫に。
当たり前の話なんですけど価格が適正じゃないんですよ。
価格が高すぎる。
東急ハンズで売ってるものを自分のおこづかい手数料と海外配送料1,200円かかると倍以上になっちゃうんです。
お客様から価格は適正じゃないという指摘を受けました。
あと日本でも流行っている商品は日本でも在庫がないんですよ。
適正価格のコントロールと在庫のコントロールをするには卸してもらうしかないだろうなと思いました。
BtoCじゃないとダメだと。
それでCtoCのビジネスモデルへの転換が必要だったわけですね。
はい。
そのときに日本のデザイナーさんとかクリエイターさんとかがフラッタースケープで出品してたので、聞いたんですよ。
海外で直接販売してくれませんかってお願いしたら、皆テンション上がってきていいよーとかいってたんですけど、最後にはリスクが高いので中々話が先に進まなかったんです。
製造物責任法は誰が責任とるのとか、送ったあとは誰が支払い確認するのとかすごい色んなことが山積みになって。
一回この人たちの信頼を得るために日本から海外にじゃなくて、日本から日本をまずやってみようと、国
内の取引だったらもっと早いんじゃないのっていう過程が生まれてきて。
それがMONOCOの原型ですか。
そうです。去年の2月くらいからですかね。
そのときお会いさせていただきましたよね。これから作るっていう段階だったと思います。
そうですね。ありがとうございました。全て土本さん知ってらっしゃるって感じですよね。
最初は週末プロジェクトみたいな感じで株主にもいってなくて。
それだけ大きな変化を株主さんに言わずにすすめられたんですか。
これやっちゃったベースなんじゃないかと思って。
週末プロジェクトだったら大丈夫なんじゃないかと、怒られませんと感じたので。
すごいなと思ったのは柿山さんの行動のスピード、モノを想像されてアクションを起こすスピードの早さ。
それと周りの人たちを説得していくプレゼン能力がすごいと思うんですよね。
ありがとうございます。
何かプレゼンするときに心がけていることとかってありますか。皆さん悩まれていることだと思うんですよ。
なかなか周りを巻き込んで動かしていくっていうのは難しいことなんですよね。
難しい質問ですね…大学で1年間プレゼンについて実践出来るクラスが必修であったんですよ。
1年間人前で話つづけなきゃいけないっていう。何か課題を与えられて書物など読んだりしてインプットして
1週間でまとめて皆の前でプレゼンしなきゃいけないんですよ。こういうのを毎週やってました
あと、心がけてることは…3つですね。ポイントを3つにまとめること。
そして、言葉をシンプルすること、誰、にでもわかる言葉で。
あとそのことについてめちゃめちゃ思うこと、パッションを感じること、そしてそれを言い続けるっていう。
90分の中で何度も何度も。
そうすれば皆わかってくれるんですよね。
今日も3つですもんね。
そうですね。心がけてましたね。
いや、それすばらしいなと思います。海外での経験も大きいんじゃないかなと思いますね。
そうですね。やっぱり英語も日本語も中途半端になって日本語が中学くらいで終わっているので
日本語が簡単に聞こえるっていうのが結果的に良かったんじゃないかなと。
すごい難しい言葉使えないので。
ところで今スタッフは何名ですか。
25名です。25名のうち5名が日本人です。
その採用にはポリシーがあるんですか。
採用には3つ重んじてることがあって。
また3つですね(笑)
ははは。
多言語、多文化、多様性ですね。
違いを肯定できるというか。皆いろいろミックスじゃないですか。
そのミックスやバラバラを皆重んじてそれを尊重しあうのはMONOCOらしいと思っていて。
例えばイスラム教の方が会議中にいきなりいなくなったりして、エレベーターホールで何やってるかっていったら
礼拝。
昔は小さいオフィス借りてたときはあって、”あれ!?トニーいないけど何やってんの?”
っていったら隣で”儀式?やってるよー”ってあぁそうなんだって。
日本人だったらえー?ってなるじゃないですか。
でも普通みたいな。お国柄だったり、お肉食べないとか、野菜しか食べないとか元々自分の国の文化を重んじて
生きてきてる人たちがいると、その違う部分を上手くミックスしたら面白いんじゃないかと僕たちはずっと
思っていて。いわゆるプチ世界平和がここにある。
なのでそこの3つを考えて採用していますね。
多国籍集団ですね。
そうですね。日本の方でいくと、経験者というか日本の市場を知っている方はもちろん欲しいんですけど
やはり多様性とMONOCOが大好きであることと、自分から率先して動けるっていうのは必要ですね。
ベンチャーなのでイニシアチブを自分でとれるかどうか。
問題解決能力があるかどうか。ですね。
なるほど。皆さん働き方はどうされてるんですか。
もう好きなところで、自由にやってます。
社内の連絡事項とかはどうされてるんですか。
ヒップチャット(hipchat)っていうアメリカのシステムを導入してて、いわゆる社内のチャットシステムとしてそれを使ってます。
出勤する必要はないわけですね。
ないですね。
柿山さんはいらっしゃらないこと多いんですか。
僕は打ち合わせだったりとか取材きていただくことがあるのでここにいることが多いです。
国柄かもしれないんですけど僕、家だと仕事できないんですよ。
仕事場に行きたいというのがあって僕はほぼ毎日来てますね。
みんなが一同にミーティングすることもあるんですか。
全社会議が月の第1週目の月曜日にあります。各デパートメントのチームでのミーティングが1週間に1回。
特にうちの目玉っていうのがマーチャンダイジングなのでマーチャンダイジング会議っていうのはフロア真ん中の長テーブルに集まって、
モニターに出して何これ、ちょーかわい〜どんなデザイナーさんなの?
井戸端会議の最強版みたいな。楽しいですよ。
今後MONOCOはどうされてきたいですか。
企業としてどう成長させていきたいですか。
僕らはAmazonに売ってないものは全部売りたいって思ってるんですね。
いわゆる嗜好品のAmazonになりたいんですよね。
日常で使うもので人が死ぬまでに使うアイテムって2000アイテムらしいんですよ。
僕らはデザインの良い商品、デザイナーさんの愛がこもっている商品って長持ちするし、
それを使うことによって心の豊かさや自己表現につながると僕らは思ってます。
その自己表現をサポートすることによって心の豊かな生活を送ってもらいたいっていうのがあります。
野望はライフスタイルのamazonになって、2000アイテム全部扱う。全てMONOCOで買っていただけるようにしたい。
だから今はちゃんとカテゴリを見極めて、今後は家具に強くなろう、Tシャツに強くなろうって横展開を考えながらも縦の強み、
カテゴリを深めていくことをどんどん実践しているって感じです。
今総取り扱いアイテムどれくらいあるんですか。
今まで販売した商品は、6万点です。
その中で常時買えるものが、1,000点くらいですね。
今現在の買える商品の1,000アイテムのうち10%が明日もしくは明後日に配送させて頂く定番取り扱いアイテムです。
でもより多くのお客様により良いサービスをお届けするには1,000じゃダメだと思っているので、
永遠に増やしたいですよね。