先輩起業家へインタビュー　起業コンサルタント　ネクストサービス株式会社　代表取締役　松尾昭仁さん

松尾昭仁さんの著書、ビジネス書籍は21冊。(2016年4月現在)2006年7月に発表した「誰にでもできる「セミナー講師」になって稼ぐ法」はAmazonランキング和書総合1位を獲得しました。

どんな起業家を支援していらっしゃいますか？

弁護士、会計士、税理士、社会保険労務士、行政書士などの一般に「士業」と呼ばれる方々、そして、ファイナンシャルプランナーなどの有資格者で専門性を持った方々の起業支援やサポートをしています。

起業支援やサポートも色々な方法があるのですが、一つ目は士業や有資格者の方々に「セミナー」を開催して頂き、セミナー参加者集めなどのお手伝いをする事です。二つ目に、本を出版し著者となることで士業や有資格者の方々の信用力を上げる事が可能ですので、その出版支援サービスというものを行っています。

私自身、これまで9冊の本(セミナー講師になって稼ぐ方法 【実践編】 など、上記著書一覧リンク参照)の出版を重ねてきましたので、その経験を通じて得たものを彼らに伝えています。そして、士業や有資格者など専門家のためのWebプロデュースも行っています。

松尾さんの主な顧客である士業・コンサルタントはどんなことで悩んでいますか？

大きくは二つです。一つ目は「集客」、そして二つ目は「ブランディング」です。彼ら士業や有資格者の方々は「モノ」を売らずに、「自分」というものを売っていますので、お客様にとって彼らが良く見えないと売れないわけですから、「セルフブランディング」を如何にしていくかが大切ですね。なぜ、「モノ」が売れないのか？というと、まずは存在を知ってもらわないと売れないわけです。

大資本があるところはテレビCMなどを打ちますよね。ですから専門家も個人PRをしないと売れないわけです。セミナーを開催したり、本を出版したり、Webページを作ったりしないと起業したての人は知ってもらうことさえできないわけですね。

社会はいま、プッシュ型営業と呼ばれる「売り込み」に対して拒否反応を示していますよね。ましてや、「先生」と呼ばれる専門家が「売り込み」に行っては駄目ですよね？「売り込み」に行くことによって、商品価値を下げて、価格を下げているわけです。お客様に「ほかにも先生がいるから、まずは相見積りね！」という風になってしまうわけです。ですからお客様から逆に指名していただくための戦略を考えないといけませんね。

起業家は未来にぶつかる障壁を想定できているのでしょうか？

未来にぶつかる障壁というケースに関しても2パターンの起業家がいると思います。しっかり戦略をもって未来にむけて準備をされている起業家と、行き当たりばったりの起業家ですね。私がお会いするほとんどの起業家は後者です。

「資格をとってみたが、どうしよう？」「会社を辞めたが、どうしよう？」といった方が多く、具体的な仕掛けや仕組みを考えて起業する方は少ないですね。資格の学校では「合格すれば、年収800万！」などと謳っているのですが、合格してからは誰も面倒を見てくれません。勉強をしているときは多分みなさん、「合格すれば資格もついて、ブランドもついて、お客様もついて年収○○万！」と思っていますよね。世の中、医者も弁護士も過当競争になってきているので、資格が自分を食べさせてくれることはなく、何よりも大事なのは営業力です。

営業力を磨くために、何をしましたか？

実は僕も営業は嫌いなので、いかにプッシュ（Push）ではなくてプル(Pull)で、お客様に来てもらえる方法を考えたわけです。私の場合はまずは本を出版して、本の読者がホームページを見てくれて、そして、セミナーに来てもらう。私自身の本質を見てもらい、認めてくださった方がお客様になってくれるという流れを作っているわけです。HPを見る→セミナーに来てもらう→お客様になってもらうという流れのやり方を教えているわけです。

「僕なんかで人前でしゃべれないよ・・」なんて思ってらっしゃる方は多いと思うのですが、その方々にはどうやって教えているのですか？

人前で話すのが苦手でもやってみたら意外と怖くなかった、なんてことは多いですよ。やったことないから怖いだけであとは場数です。1回目よりも2回目、2回目よりも3回目のほうが必ず上手になるので、続けるようアドバイスしています。誰だって最初からうまく行くわけではないですから。ただし、お客様の貴重なお金や時間を頂戴してセミナーを行うわけですから、しっかり準備はすべきです。

起業してはいけない人ってどんな人でしょうか？

営業嫌いの人、人嫌いの人は独立して起業するとやはりきついと思います。「営業が嫌いだからネットで完結しよう」と思っていても、営業嫌いな人や人付き合いの苦手な方は文章にそれが表れます。私のところにもネットから色々な問い合わせが来ますが、人付き合いが苦手な人は一瞬でわかります。「私は・・・」なんていう、自分を押し付ける人が多いですよね。そして、起業する前にしっかりと考えてほしいことは、時流もあるし、運もあるでしょうが、扱う商品によってその人の年収は決まるということです。しっかりとそのあたりを考えてほしいなと思います。

いろいろ仕事で協力してくれるパートナーや業務提携先を増やすにはどのようにしたらよいのでしょうか？

仕事で協力してくれるパートナーや業務提携先を増やすには相手に「この人と付き合ったら得だな・・」と思わせることです。そして、彼らパートナーや業務提携先にお話しするときは、主語をちゃんと「あなた」にすることです。「あなたにメリットがある！」と話すからこそ、相手は協力してくれるのです。よく Give&Take とかWin-Win と言いますが、まずは相手が最初に喜ぶことをするのは基本だと思います。そして、それが最後には自分に戻ってくるという考え方です。

松尾さんの考え方を聞いていると、「何事も投資が必要」という考え方ですね？

基本的に人もモノもお金も投資をしないとレバレッジ効かないですよね？たとえば、「お金がないから自分でホームページを作ろう」という考え方は良くないと思います。大切な時間という資源を専門外のところに投資しても費用対効果は低いです。「安物買いの銭失い」になっている人が多いですね。そもそもビジネスをすること自体が投資ですから、投資ができない人はビジネスをするべきではありません。

これまで経験した大きな失敗はなんですか？

大きな失敗といえば、あるFCに加盟したことですね。加盟した瞬間、夜逃げです（笑）。それまでせっせと奥さんが家を買おうと思って貯めてくれていた300万円がなくなりました。そのときの教訓は、どんなに良い商品だろうと、「自分でリスク管理できない商品を扱うのはだめだ」ということです。でもそれで学ぶことができたから、いまは自分の事業が出来上がってきたわけです。前回のインタビューのホリエモンさんも話していましたが、人、モノ、金がかからない商売をすることですね。

やっぱり起業って楽しいですよね？

正直、ぼくはサラリーマンが嫌で起業した後ろ向き起業でした。ですから最初はお金に困りました。サラリーマンはどんな状況であろうと、25日に毎月給料が振り込まれてきますよね。起業当初のころは収入0の月もあるわけです。それでも辞めなかったのは、ストレスがないからです。

勤めていたころに比べて、いまはストレスなく、お客様も仲間も得られます。ストレスフリーが何よりも起業して良かったことです。僕の周りのコンサルタントもみんなストレスフリーのことを口にしていますし、みんな愉快な顔をして、実年齢よりずっと若く見えますよ。

バーチャルオフィスってご存知でした？

はい、もちろんバーチャルオフィスは知っていました。実はぼくの本にも、これからはサラリーマンも含めて、個人個人が自分のブランド力をつければ、自分の扱う商品も自分も高く売れますよ、ということが書いてあります。

今後、独立してお金がなかった場合、自宅の住所を自分のホームページに出すよりもワンストップビジネスセンターのようなバーチャルオフィスを活用して一等地の住所を利用したほうがよっぽどお客様が信用しますよね。ましてや士業やコンサルタントの様に形のないものを売る場合、ブランド力のある住所の利用やコスト削減の面などでバーチャルオフィスの活用はとても重要になってくると思いますし、バーチャルオフィスの活用が自身のブランディングにも未来にもつながってきます。オフィスはちゃんと稼いでから持つようにしてください。

起業家および起業家予備軍に向けてメッセージは？

起業したいのだったら、まずはやってみたらいいと思いますよ。日本は景気が悪いとはいえ、勤勉に働けばしっかりと食べていけます。限度を決めてやってみたらいいじゃないですか？たとえば、貯金の500万を限度に、それを使ってだめだったらやめるとかでもいいと思います。駄目だったら、また勤め人に戻ればいいじゃないですか。一度きりの人生ですから、自分が主人公で歩んでみたらどうかと思いますよ。