テレワークを続けるのは無理?その理由と解決策、成功した事例を紹介

春緒

春緒

2021.10.22
テレワークを続けるのは無理?その理由と解決策、成功した事例を紹介 イメージ

急速に社会に浸透したように思えるテレワーク。しかし総務省の調査によると、テレワークを導入した、または導入を検討している企業は58.2%という結果に。4割程度の企業は、テレワークの導入を検討していないことが明らかになりました。

一方でアドビのテレワーク勤務のメリットや課題に関する調査では、テレワークを実施した人の86.4%が自身の生産性が向上したと回答しました。

テレワーク導入の成功のポイントは、人も業務もデジタル化に対応させること!導入の成功事例もあわせて紹介します。


▼ 目次
1. テレワークを導入しない理由
1-1. テレワークに適した仕事がない
1-2. 情報漏洩が心配
1-3. 判子やサインなどがオンラインでは対応できない
1-4. プリンターやスキャナーなど作業環境が整っていない
2. テレワークにはデジタル化が重要
2-1. データ化できる資料はオンラインで管理する
2-2. セキュリティを強化する
2-3. 電子署名や判子を採用する
2-4. テレワークでは対応しきれないときはオフィス勤務も
3. テレワークを成功させた事例
3-1. 勤務体制は「在宅」「サテライトオフィス」「モバイルワーク」から選択
3-2. テレワーク導入のための説明会を実施
3-3. ツールやサテライトオフィスを活用
3-4. 9割の社員が「ポジティブな効果があった」と回答
4. それでもテレワークができない職種や業種とは?
4-1. 受付や窓口対応業務
4-2. 教育現場の職員
4-3. 公共の乗り物の運転手
5. テレワークは働き方のひとつ!必要なときにはオフィス勤務も


テレワーク無理

テレワークを導入しない理由

テレワークを導入できずにいる原因には、業種や職種別の問題以外にも、テレワーク導入に関する準備不足が挙げられます。

総務省やアドビの調査から、企業がテレワーク導入しない主な理由を紹介します。
 

テレワークに適した仕事がない

総務省の調査では「テレワークに適した仕事がないから」と答えた人は80%。続いて「業務の進行が難しいから」が34%で第2位です。業務上、テレワークにどうしても対応できない企業も多いことがうかがえます。

具体的には、同調査で最も導入率の低い産業は運輸・郵便業で30.4%でした。荷物や手紙を運ぶ業務にはどうしても直接的な人の移動を伴います。

そうした企業が一部の業務だけをテレワークに対応させると、規則やツール整備などが複雑化することがあるほか、職務の違いが不公平感を招くことも危惧されます。

新しい働き方を取り入れたいけれど、初動時の手間や雑務を考えると、現状ではいままでどおりの働き方が一番合理的ということになってしまうのです。

 

情報漏洩が心配

総務省の調査では、テレワークを導入しない理由として「情報漏洩が心配だから」をあげた回答者が19.3%。全体では第3位でした。オフィス以外での勤務には、セキュリティ上の不安がある企業も多いようです。

セキュリティの問題はネットワークだけに留まりません。紙の文書にも個人情報が含まれます。

テレワークを導入しない理由の第4位は「文書の電子化が進んでいないから」です。またアドビの調査では、テレワークを実施して感じた業務上の課題は「会社にある紙の書類をすぐに確認できない」が39.6%で最も多いという結果に。

これらの資料を電子化する際にも、その扱いと情報リテラシーの向上が求められます。

 

判子やサインなどがオンラインでは対応できない

アドビの調査では、テレワーク中、判子・サイン・紙資料の確認などで出勤したことがあるかという問いに21.4%が「頻繁にある」と回答。「ときどきある」と回答した人が42.8%になりました。

紙の資料はその確認だけでなく、受け渡しや署名にも現実の人の手を必要とします。サインするためだけに出勤の必要があるとなると、テレワークを導入するメリットを十分に享受することができません。

誰かがまとめて代筆するというわけにもいかないので、サインや判子の実物を求められる書類の扱いが多い業務は、テレワークの導入が現実的でないのが現状です。

 

プリンターやスキャナーなど作業環境が整っていない

オフィスには大型の複合機やFAXがそろっていても、自宅でテレワークをするときには同じ環境は望めません。紙や文具などの細かな費用も積み重なれば大きな負担になります。

快適な労働環境のためにテレワークを取り入れるのに、負担が大きくなってしまうのでは本末転倒です。

アドビの調査では、テレワークを導入しない理由に「プリンターやスキャナーがない」と回答した人は36.2%でした。

また、企業側もテレワークをする社員のためにPCやWi-Fiルーターを支給したり、サテライトオフィスを契約して機材の環境を整えたりするのには導入コストがかかります。

働く側にとっても企業にとっても、業務の環境に関する問題はテレワークを導入する際の大きな問題のひとつとなっています。

 

テレワーク無理

テレワークにはデジタル化が重要

業務上テレワークが適さないという場合を除けば、テレワークを実施できない理由の大部分はアナログからデジタルへの切り替えにあります。働く人だけでなく職場そのものをテレワークに対応させなければ、むしろ業務効率が下がることも。

解決策のアイデアと、オフィスを利用したほうが効率のいい場合をそれぞれ紹介します。
 

データ化できる資料はオンラインで管理する

まずは紙の資料をできるだけデータ化するところから始めましょう。データ化が容易な資料と準備が必要なものをわけ、マニュアルや月間予定表など、デジタル化しやすい資料からオンラインで利用する仕組みづくりに取り組みます。

紙のままオフィスで管理した方がよいものに関しては担当者を決めておきましょう。ほかの業務は別の人に割り振るなど、テレワークができない人の負担を軽減することができます。

また、試験的に外部のツールやサービスを利用して、使いやすいものを検討しておくのも大切です。

GoogleドキュメントやTeamsなども手軽で、セキュリティ面でも安全性が高いのでおすすめです。

具体的には、Google ドキュメントでは組織外のユーザーから共有されたファイルが自動的に審査され、フィッシングやマルウェアの有無が確認されます。

Teamsでも転送中のデータと保存データが暗号化されるなどのセキュリティ体制がとられています。

便利なクラウドサービスについては「テレワークでよくある悩みを解決するクラウドサービスを紹介」もご参考ください。

 

セキュリティを強化する

上述したGoogle ドキュメントやTeamsなどのセキュリティに強いツールや、ウイルス対策ソフトなどの使用を徹底して、テレワーク環境のセキュリティを管理しましょう。

また公共の場でPCを開くと、いつの間にか不審なネットワークに繋がってしまうことがあります。

業務中は暗号化されたネットワークなど、信頼できるものだけを利用しましょう。暗号化されているネットワークなら、名前の横に鍵のマークが出ますよ!

機密書類の扱いを規定として定める、ITリテラシーに関する知識を共有するなど、働く人のアップデートも欠かせません。

家庭で共有しているPCでテレワークをし、データをそのままに残しておくと、ほかの家族がそれを見てしまうということも。家族といえど、取引先から見れば部外者です。不用意に他人の目に個人情報をさらすことのないよう、細心の注意を払う必要があります。

 

電子署名や判子を採用する

2020年6月、経済産業省は契約書への押印は必ずしも必要ではないという見解を発表しました。

とはいえ、慣例として押印を求められる場合も多く、自社だけの判断で「押印撤廃」を決断することは難しいのが現状です。そんなときは電子署名や判子の採用も検討を!

 

社内での報告書や上司の確認印などは、比較的変更が容易なはず。企業内で規定を見直し、負担の軽減に努めましょう。

時代は押印撤廃に向けて動き始めています。クラウドサインの電子署名なら外部サービスなどとも連携しやすく、知名度も高いので、取引先とのやり取りもスムーズです。

いまのうちから電子署名に移行しておくことで、新しい取引先が電子署名を希望した時にもスムーズに対応ができますよ。

 

テレワークでは対応しきれないときはオフィス勤務も

プリンターやスキャナーなどの設備の利用には、テレワークでは限界を感じることも。どれだけテレワーク導入のために設備を整えたとしても、オフィスの利便性にはかなわない、という場合もありますよね。

そんなときには完全なテレワークを目指すのではなく、必要に応じてオフィスも使えるよう、柔軟な働き方を採用しましょう。

機密資料の管理に不安が残るときは、無理せずオフィス勤務を取り入れて。ただし「月に何回」「毎週何曜日」などとスケジュールを組んで。必要なことはその日一日で済むよう、対面での会議なども日程の調整を!

また、機材の問題は職場で余っている機材をうまく融通することで解決する場合も。

わたしは当初カメラ付きのPCが自宅になく、web会議に参加ができませんでした。上司に相談した所、職場の使っていない機材を借りられることになり、web会議の日でもテレワークが可能になりました。

持ち運びのできる機材やよく使う文具などは持ち出すことができる規定を使っておくと、テレワークのときも普段通りの環境を維持できます。

 

テレワーク無理

テレワークを成功させた事例

テレワークの導入に成功した企業は、どんな工夫をしているのでしょうか。テレワーク推進企業等厚生労働大臣表彰~輝くテレワーク賞~にて優秀賞を受賞した住友商事株式会社の事例を紹介します。
 

勤務体制は「在宅」「サテライトオフィス」「モバイルワーク」から選択

住友商事株式会社では、勤務体制を自宅 (在宅)、サテライトオフィス、それ以外の場所 (モバイルワーク) での勤務から選択できるようにしました。自宅やカフェなどでのテレワークが困難な場合、近隣のサテライトオフィスでも勤務できるよう環境を整えたのです。

その結果、設備やネットワーク環境の問題がクリアになり、公私の区別がつけづらいというテレワークの問題も解消されました。

また、運用ルールの詳細やFAQ等を含めたテレワークガイドラインを作成して社内で公開することで、それぞれの勤務体制での働き方のモデルを明確にしています。

 

テレワーク導入のための説明会を実施

ガイドラインを公表するだけでは、その内容が意図したように浸透しないことも。住友商事株式会社では事前に説明会を設け、社員の意識改革を図りました。

この説明会ではコミュニケーションの重要性やアウトプットに対する責任についても周知され、テレワークでトラブルになりがちな人間関係の問題についても対策が取られました。

また階級別にIT講習会を実施し、一人一人が注意すべき情報リテラシーについても社員が理解したうえでテレワークを導入しています。

環境だけでなく、働く人自身もテレワークに向けてアップデートしておくことが、スムーズな導入につながったのです。

 

ツールやサテライトオフィスを活用

テレワークの問題を解決するため、住友商事株式会社ではコラボレーションツールを採用しました。

業務開始時間になると社員はこのツールにサインインをし、15分以上の離席は申告制とすることで勤務時間を管理したのです。

また、経費精算システムやチャット、web会議ツールなどを完備して働く環境もオンラインに適応させました。対面の会議や業務が必要な場合に備えてサテライトオフィスを契約するのも、多様な働き方に対応するための工夫です。

 

9割の社員が「ポジティブな効果があった」と回答

制度としてのテレワークに成功した住友商事株式会社では、社員の働きがいに変化はあったのでしょうか。

2019年2月と9月、2020年に実施したアンケートでは、「働きがい向上に対し、ポジティブな効果があった」「働きやすさ向上に対し、ポジティブな効果があった」という回答をした社員がそれぞれ9割という結果になりました。新しい働き方がスムーズに浸透した結果、働く人にとっても有意義な結果となったのです。

住友商事株式会社の例は、ひとつの会社の事象に過ぎません。すべての会社がこのやり方でうまくいくとは限りません。それでも、成功モデルのひとつとして参考にできる点は多そうですよね。

テレワークの導入を検討しているけれど、具体的な成功例が見えてこないという企業は、まずはこのモデルを下敷きにした導入計画を立ててみるのもおすすめです。

 

テレワーク無理

それでもテレワークができない職種や業種とは?

有意義な働き方の選択肢として定着しつつあるテレワーク。しかし、なかにはテレワークとの相性が悪い職業も存在します。先に紹介した郵送・配達業のほかに、テレワークに適さない業種や職種をまとめました。
 

受付や窓口対応業務

ある程度は電話やメールで対応できても、客や取引先が直接訪れる可能性のある場所では出勤が必要な場合が。特に、問い合わせの窓口や施設の受付などは人がいたほうが安心という場合も多いですよね。

AIガイドや音声案内なども併用して業務を削減しながら、負担を減らしましょう。

 

教育現場の職員

学校などの教育機関で対面授業が行われているときは、教員も出勤します。そのほかにも、教育現場が円滑に機能するためには、事務職員や清掃員、給食の調理職員なども出勤が必要です。

子供たちの教育のためには必要ですが、一方で、一部の授業をオンラインで行う学校も増えています。社会情勢に関わらず、どんな状況でも子供たちが学べる環境を整えるために、教育現場も工夫を重ねています。

 

公共の乗り物の運転手

バスや電車などは、住民の足として欠かせません。特にお年寄りの多い地域では、病院や買い物にタクシーを使用することも。そうした乗り物の運転手は、テレワークを行うことが出来ません。

最近では自動運転のバスも試運転が始まっていますが、実用化されるにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

テレワークは働き方のひとつ!必要なときにはオフィス勤務も

テレワークは働き方のひとつに過ぎません。有意義に活用できるのはよいことですが、それができない場合は、これまでの働き方と組み合わせることも重要です。

なにごとも無理せず、状況や環境にあわせて適切な方法を選べることが、本当の新しい働き方。テレワークの問題を解決しつつ、できることとできないことを整理して、働き方のバランスを取っていきましょう。
 

春緒
この記事を書いた人

春緒

フリーのWEBライター兼シナリオライター。好きなものは本と珈琲。年を取ったら、着物で生活する人になりたい
 
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