6年目ライターが教えるフリーランスのリスク

佐々木ののか

佐々木ののか

2021.12.14
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フリーランスと聞くと真っ先に思い浮かぶのは「収入が不安定」であることや「リスク」という言葉。かく言う私も、会社を辞めて独立するときにフリーランスの知人に「生活の不安はないんですか?」などと、今思えば失礼な質問を投げかけたものです。

確かに、フリーランスをやっていくうえでのリスクは存在します。たとえば、社会的信用がないことといった実益に絡むこともあれば、相談できる人がそばにいないといった心理的不安要素まで多岐に渡ります。

ただし、リスクとはあくまで確率の話。リスクと対策を事前に知れば、トラブルを未然に防ぐこともできます。今回は、フリーランスのライター6年目になる著者が、自分の体験やフリーランス仲間から見聞きした情報をもとにフリーランスのリスクと対策についてお伝えしていきます。


▼ 目次
1. お金に関する不安
1-1. 収入が不安定
1-2. スキルの切り売りなので、年収を上げにくい
1-3. 住民税や結婚式のお誘いなど急な出費に注意
1-4. おまけ:わたしのやった駆け出し時代の営業の仕方
2. スキルやキャリアが身に付きづらいリスク
2-1. 教えてくれる人がいなくて不安
2-2. 職種によっては転職時に通用するスキルが身に付きにくい
3. 他にもあるいろんなリスク
3-1. 相談できる人がいなくて寂しい
3-2. 事務手続きをすべて自分で行わなければいけない
3-3. 取引先とのトラブルも自分で解消しなければいけない
4. まとめ


お金に関する不安

お金に関する不安

収入が不安定

お金に関するリスクで真っ先に思い浮かぶのは、毎月の収入が不安定なことではないでしょうか。

私自身も独立したてで人脈も実績もない時期は収入が特に安定せず、独立してから数ヵ月は月収が3~5万円を行ったり来たりしていました。幸いその頃は60万円ほど貯金があり、家も友人宅を間借りさせてもらっていたため、収入が不安定なことは精神的に堪えませんでした。

もし会社を辞めてフリーランスになることを検討中の方は、最低でも3ヵ月分の生活費を貯めてから独立することをおすすめします。

また、軌道に乗ってからも収入が不安定になることはもちろんあります。お仕事が少ないときは営業をかけるなどしてカバーもできますが、支払い月が想定よりもズレたり、もらえるはずだった案件が急遽なくなってしまったりすることは日常茶飯事。

振り込み日や、請求書発行のタイミングが納品日ベースか公開日ベースかなど、請求ルールもクライアントによって異なります。駆け出しのときは特に収支の管理がうまくできず、稼働しているのにお金が一向に入ってこず、苦しい時期がありました。

結局親にお金を借りたり、親しくしているクライアントに無理を言って入金時期を早めてもらったり、先にお金だけもらって後から発注してもらったりしましたが、こうしたケースは極めて稀です。

フリーランスの収入のリスクを下げるためにはまず、1カ月で稼ぐ目標金額を設定しておきましょう。たとえば、Twitterのフォロワー数が10万人近くいるインフルエンサーの知人は、目標金額を1ヵ月60万円に設定していると話していました。

各種税金が引かれるフリーランスは、最低でも会社員時代の月収の1.5倍を目安にすると良いでしょう。

私の場合は上記に加えて「報酬管理シート」を作成・活用しています。クライアント名と案件の金額、請求月と支払い月を入力すると、各月の振込金額が自動計算される仕組みです。このシートを使うようになってから月末に「収入が足りない」と慌てることもなくなりました。

 

スキルの切り売りなので、年収を上げにくい

フリーランスはスキルの切り売りで対価をいただくので、特定のスキルに依存した働き方だと年収は上がりません。実際にフリーランス6年目の私も、年収が頭打ちです。

年収を上げるためにやれることは大きく二つ。取りこぼしの無いよう料金表を作ることと、企業の仕事を巻き取ることです。

たとえば、ライターの得る「執筆費」。企画書・構成案の作成の有無、打ち合わせ・修正の回数、納期までの期間によって、ライターにかける工数は変わります。当然、執筆費もその工数に応じて変えなくてはいけません。

そこで便利なのが、「執筆費」に含まれる作業を細分化した料金表を用意することです。ブログに料金表とNG要件を書いておけば、取りこぼしもなくなりますし、不相応な依頼が来るのを未然に防げます。

また今の仕事にこだわるなら、企画・構成の作成、アポ取りなど、企業側が用意するべき仕事を巻き取ると1案件あたりの単価を上げられるかもしれません。フリーの仕事のほかに割の良い業務委託契約を結んでもいいですね。

ただし駆け出しのころは、実績づくりのために報酬が安くても仕事を受けることが大切です。ある程度の経験を積んでから、収入を上げることを考えましょう。

 

住民税や結婚式のお誘いなど急な出費に注意

住民税や結婚式のお誘いなど急な出費に注意

独立したてのフリーランスにありがちなのが、確定申告後の毎年6月頃にくる住民税の請求です。

その金額は課税所得の10%程度と言われ、年収400万円の人であれば40万円ほどになります。分割払いにしてもかなりの出費です。

資金繰りに困らないよう、確定申告が終わった後から住民税の金額シミュレーションをしておくのがおすすめです。

また、フリーランスに限ったことではありませんが、20代後半は友人の結婚式に参加するのも地味に家計の痛手となりました。

私もお金がない時期は二次会だけ参加させてもらったり、ご祝儀だけ送らせてもらったりしました。もちろん普段から貯金をしておくに越したことはありませんが、万が一のときは正直に打ち明ける勇気も必要です。

 

おまけ:わたしのやった駆け出し時代の営業の仕方

前職がまったく関係のない職種の場合は実績のないことが多く、営業に行っても仕事がもらえないことがほとんどです。

私も新卒で入社した会社がアパレル小物メーカーの営業として働いていたため、一般的なライター募集条件には箸にも棒にもかからない状態でした。

そこで、私が利用したのはビジネスSNSサービス「Wantedly」の「会社に遊びに行く」です。私が独立した2015年頃の「Wantedly」では興味のある会社にカジュアルに遊びに行ける空気感がありました。

まずは興味のある会社に遊びに行って、初心者にも任せられそうな簡単な案件や、他のライターが締切までに納品できなさそうな案件があれば無料で書かせてもらえないかと交渉します。

先方はお金を負担しないので使い物にならなくてもリスクはないですし、こちらとしてもブログ以外の媒体での執筆実績がつくれることはメリットです。

こうして、実績をつくるうちに最初は無料で依頼してくれていた企業の方から、ライターとして発注をいただけるようになったり、他の編集プロダクションの方に紹介してもらったりと、仕事の幅が自然と広がっていきました。

 

スキルやキャリアが身に付きづらいリスク

教えてくれる人がいなくて不安

フリーランスには、指導者がいません。丁寧に指導してくれる親切な先輩や取引先の編集者に出会えればいいですが、業務に追われる中で外部の一フリーランスを育成しようという気概のある人は少ないでしょう。

とはいえ、スキル特化型労働力のフリーランスがスキルを身につけられないのは問題です。そこで私は知人のライターの先輩にお金を支払い、フィードバックをもらうことでスキルアップを目指しました。

また、私の友人は編集プロダクションの仕事も積極的に受けていました。編集プロダクションの案件は、企業との直取引よりも報酬が低い傾向にありますが、丁寧に赤入れしてくれる会社も多いのです。

お金をもらいながら勉強するつもりで、そうした会社とのお仕事を増やすのも方法のひとつでしょう。

 

職種によっては転職時に通用するスキルが身に付きにくい

エンジニアなどの専門性かつ汎用性が高い職種と違い、ライターは転職時に通用するスキルが身に付きにくいと感じます。

私も今までに何度か転職エージェントのサイトに登録しようとしたことがありましたが、企業が求職者に求めるスキルに当てはまるものをほとんど持っていませんでした。

企業に転職する可能性が少しでもあるなら、早い段階で企業とコネをつくっておくか、本業に関わるもの以外でも潰しの効くスキルを持っておくと良いでしょう。
 
 

相談できる人がいなくて寂しい

他にもあるいろんなリスク

相談できる人がいなくて寂しい

会社に勤めていれば否応なしに人と会う機会がありますが、フリーランスの場合はそれがありません。ルーティーンや拘束が嫌でフリーランスになる方が多い印象ですが、人と全く関われないとなると寂しいものです。

そうした寂しさを打破するためにコワーキングスペースを定期利用したり、取引のある会社に間借りさせてもらったりして気を紛らわせましたが、深いつながりができるわけではないため、相談ができる相手がいないことに長く悩んでいました。

私が最終的にたどり着いた解決策は、定期的に一緒に作業するフリーランス仲間をつくることです。同業種のフリーランスの知り合いができたら「作業会」と題して集まるルーティーンをつくり、その中でも特に気の合いそうな人と一緒に顔を合わせて作業するようになるうち、悩み事を打ち明けられる関係になりました。

ちなみに、リモートワークが推奨されている時期の作業会には「discord」というゲームチャットアプリがおすすめです。使い勝手はSlackとほぼ同じなので、取引先との連絡ツール以外のアプリを使用したい方は試してみてください。

時間はかかるかもしれませんが、フリーランスでも相談できる間柄の人に出会えるので、リスクというほど心配することはないと個人的には思います。
 

事務手続きをすべて自分で行わなければいけない

事務手続きをすべて自分で行わなければいけない

フリーランスになって最も大変だったことのひとつは、請求書の発行や契約書への記入などの事務手続きもすべて自分で行わなければいけない点です。特に、フリーランスの友達もできていなかった1年目の確定申告は右も左もわからず、地獄を見る思いでした。

今では「Freee(フリー)」や「Money Forward(マネーフォワード)」のような、リーズナブルで使いやすいサービスもありますし、「フリーランス1年目の教科書」といった本を1冊読めば、大まかなハードルはクリアできます。

それでも「スケジュール管理や経理計算が苦手」「事務手続きの時間を仕事に回したい」といった方の中には、マネージャーを雇ったり、税理士に確定申告の代行を依頼したりしている方もけっこういます。

マネージャーの金額はまちまちですが、税理士に確定申告を依頼する場合の相場は5~7万円で、領収書等の必要書類を送ればすべて代行してくれます。

自力できちんとした知識を身に着けたい方は年間2万円で税理士に相談し放題の青色申告会に加入していました。

わからないことを都度調べて対応する根気か、プロに依頼する経済的余裕のいずれかがあれば、フリーランスの事務手続きも怖くありません。

 

取引先とのトラブルも自分で解消しなければいけない

生じたトラブルは自分で解決しなければいけないことも、フリーランスのリスクです。

たとえば、取引先が会社であれば、ほとんどの場合で契約書を結びますが、個人相手の取引だと口頭での約束になりトラブルに発展するケースもあります。

私の場合は取材対象者との約束事を事前に決めていたにも関わらず、「そんなことは言っていない」「気が変わった」などと言われて記事の掲載ができなくなったり、取り下げなければいけなくなったりしたこともありました。

コミュニケーションをよく取ることはもちろんですが、個人間であっても書面上で契約を交わすことがトラブル回避に繋がります。法律に詳しい友人などの力を借りて、簡易的な契約書を作っておきましょう。

 
 

まとめ「対策を徹底すればフリーランスのリスクも怖くない」

私は会社員の働き方が合わず、やむを得ずフリーランスになりましたが、福利厚生がなく、リスクも大きいのは事実です。まずは副業やボランティア・プロボノを試して様子を見るのも良いでしょう。

どうしてもフリーランスになりたい場合は、リスクと対策を事前に知って、安心して仕事に取り組める環境をつくることをおすすめします。
 

お金のリスク対策

 ・フリーランスになる前に3ヵ月分の生活費は貯めておこう
 ・1ヵ月で稼ぐ目標金額を決めよう
 ・報酬管理シートを作ろう
 ・毎年6月に請求される住民税に注意しよう
 ・事前に料金表を作成しよう
 ・まずは実績をつくろう

 

スキルやキャリアのリスク対策

 ・単価は低くても丁寧にフィードバックをくれる取引先を見つけよう
 ・いつでも転職できるようコネやスキルを身に着けておこう

 

その他のリスク対策

 ・定期的に会う作業仲間をつくって相談できる間柄になろう
 ・個人間でも契約書をつくろう
 ・事務手続きが苦手なら税理士やマネージャーへの依頼を検討しよう
 ・社会保険や有給休暇を利用する可能性があるときは独立時期を見極めよう/p>

 

佐々木ののか
この記事を書いた人

佐々木ののか

新卒入社のメーカーを1年で退社し、2015年からライター・文筆業をスタート。普段は「家族と性愛」を中心に執筆している。
 
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