【フリーランスの請求書】正しい発行方法とタイミング

服部大

服部大

2020.11.02
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フリーランスとして受注した仕事の納品が無事完了すると、請求書を発行し報酬を頂くこととなります。

しかし、いざ請求を行う際にいい加減な請求書を発行してしまえば取引先に不信感を与えてしまい、後々の取引にも悪影響を与えかねません。

また請求書発行のタイミングを納品の都度発行するのか、ひと月分まとめて請求するのかによっても気をつけるべきポイントが変わってきます。

今回は正しい請求書を発行するために抑えておくべきポイントと、請求書発行のタイミングについて解説いたします。


▼ 目次
1. 請求書はなぜ必要なの?
2. 請求書に記載しなければならない項目とは?
3. 発行のタイミング:都度方式と掛売方式では何が違う?
3-1. 掛売方式
3-2. 都度方式
4. こんな場合はどうする?請求書にまつわる4つのギモン
4-1. 請求日はいつの日付を書くべき?
4-2. 請求書をメール送信するよう依頼されたが問題ない?
4-3. 発行した請求書に間違いが!そんなときどうすれば?
4-4. 消費税免税事業者でも消費税分を請求して良いの?
5. 請求書発行のおすすめツール
6. まとめ


 
 

請求書はなぜ必要なの?

ビジネスの世界では当たり前の商習慣となっていますが、実は請求書の発行は法律で義務付けられているものではありません

しかしながら、請求書による以下3点のような効果を期待しているからこそ、多くの取引において請求書が作成されているのです。

トラブル回避としての役割

取引内容の証拠書類としての役割

スムーズな入金処理を促す役割

 

特に口約束では「請求など受けていない」、「そんな仕事をしてもらった覚えはない」などトラブルに発展するリスクがありますので、それらを防止する意味でも書面による請求書や契約書が作成されています。

また税務上においても、取引があったことを証明する書類として、請求書や領収書の保存が求められています

さらに振込に必要な情報を記載することにより、受け取る側がスムーズに支払手続きを行えるよう促すことができます。
 
 

請求書に記載しなければならない項目とは?

前章で確認した“請求書を発行する必要性”を踏まえ、実際に請求書を発行する場合には少なくとも以下の7項目を欠かさず記載するようにしましょう

1. 請求書番号

自身が発行した請求書を管理するため、請求書ごとに異なる番号を付します。

請求書番号の付け方自体にルールはありませんが、単に「1、2、3… 」とするよりも、たとえば取引先コードと発行日を組み合わせて、「003(取引先コード)-20201031(発行日)」とすることで、自身での管理もしやすくなります。

また、先方から請求内容に関する問い合わせがあったときにも、請求書番号があるほうがやり取りがスムーズになるでしょう。
 

2. 発行日

詳細は後ほど解説しますが、一般的には作成日ではなく取引先の締め日を記載します。
 

3. 発行者情報

請求書の発行者である自身の住所や氏名、連絡先などの情報を記載します。

なお納税地(自宅など)と異なる場所に事務所等がある場合には、請求書にはいずれか連絡がつきやすいものを記載して頂ければ結構です。
 

4. 宛先

請求先の会社名や部署、担当者名を記載します。
 

5. 請求内容

どんな取引に対する請求なのかを項目別に記載します。

実務上は請求書を受け取った側が『何の請求なのか読み取れない』というトラブルが頻発します。

たとえばどこからどこまでが含まれているのかわかりにくい“抽象的な表現”や、相手方に伝わらない“過度な専門用語”は避けることが好ましいです。

【参考】項目例
× コンサルティング料 → 〇 業務効率化サポート(■■導入支援)
× 広告費 → 〇 HP制作及びSEO対策

また取引したときだけでなく、しばらく時間が経っても請求書さえ見ればお互いに「何の請求だったか」がパッとイメージできることが重要なので、自分自身だけでなく、請求書を受け取る側にもわかりやすく記載するように心がけましょう。

(書面上どうしても複雑になってしまうときは、取引先の担当者に対してあらかじめ口頭でご説明を行うことで、相手方に不信感を与えないよう工夫すると良いでしょう。)
 

6. 請求金額

一般的には請求内容ごとに金額を記載します。

また税抜・税込のように、消費税に関してもわかりやすく記載してください。

なお原稿料(書籍、ブログ執筆など)やデザイン料(パッケージやwebデザインなど)については源泉徴収が必要な場合がありますので、その場合には源泉徴収税額も忘れずに記載しましょう。

【参考】立替経費がある場合

取引先へ請求を行う際、ご自身が立て替えた諸経費(駐車場代や高速道路代など)を併せて請求する場合には、立替経費の件数や金額が少なければ請求書へまとめて「立替経費 ○○円」でも構わないでしょう。
 
しかし立替経費の件数や金額が多い場合には、請求書とは別に“経費精算書”を用意し、経費の明細を明らかにすることよって、取引先の理解も得られやすくなります。(その際に、根拠となる領収書のコピー等も添付すればさらにクリアになります。)

 

7. 振込先口座、支払期限

請求金額を振り込んでもらいたい口座(金融機関や支店名、預金種類、口座番号)の情報を記載するとともに、支払期限も明記するようにしましょう。

また振込手数料をどちらが負担するかについても、きちんと記載しておくことをお勧めします。
 
 

発行のタイミング:発行タイミングは2パターン

請求書を発行するタイミングは、大きく分けて「都度方式」と「掛売方式」の2種類あります。

どちらか一方が好ましいというものではないため、ご自身の事業内容や取引先の希望も踏まえて選択するようにしましょう。
 

掛売方式

毎月20日や月末などの一定期間で区切り、その期間内に行われた取引をまとめて請求する形式が掛売方式です。

一般的に取引を継続して行う場合に掛売方式が多く採用され、ほとんどの場合がひと月ごとに請求書を作成し、代金の入金も毎月1回という流れになります。

なお掛売方式を選択する場合、毎月請求書を発行するタイミングがバラバラになってしまうと取引先に不信感を与えかねないため、毎月決まった時期に請求書を発行するように心がけましょう。
 

都度方式

都度方式とは、一般的にひとつの取引が完了するたびに請求書を発行する形式を指し、納品書と請求書をセットでお渡しするようなイメージです。

継続取引よりも、新規取引やスポット業務を受注した際に用いられることが多い形式となります。
 
 

こんな場合はどうする?請求書にまつわる4つのギモン

ここまで請求書発行に関する基本的なルールを確認しましたが、実際に請求書を作成する際には様々な疑問が生ずることかと思います。

以下では請求書発行の際によくある疑問点を4つご紹介していきます。
 

発行日はいつの日付を書くべき?

請求書へ記載する“発行日”ですが、以下どちらを記載するべきなのか判断に迷われる方も多いと思います。
・実際に請求書を作成した日
・締め日

この回答としては、基本的には「締め日」とする方が良いでしょう。

例えば取引先における支払い事務のルールが『月末締め、翌月20日払い』であった場合、“発行日”が月末までの日付の請求書でないと翌月20日に支払いが行われず、入金が翌々月20日まで延びてしまう可能性があります。

このような支払事務における“柔軟さ”は企業によって様々なので、請求書に記載した“支払期限”に応じて臨機応変に対応する会社もあれば、自社のルールを徹底する会社もあります。(取引先との力関係も大きく影響する部分です。)

またその他にも、取引先によって「毎月〇日までに請求書を送ってほしい」といった要望があることも多いため、初めて取引を行う際や実際に請求を行う際には、あらかじめ請求に関するルールを擦り合わせておくことをお勧めします。
 

請求書をメール送信するよう依頼されたが問題ない?

時代の流れに合わせて、「紙ではなく、メールで請求書を送ってほしい」という声も増えつつあります。

税務上、請求書を電子データで送ること自体は問題ありません

その場合には、ExcelやWordの基データのまま送付するのではなく、より複製や改ざんがしにくいPDFデータなどで送信することが一般的です。

なおメール送信する場合、「請求書へ押印がなくても良いの? 」と思われるかもしれませんが、押印が無くても請求書としては問題ありません
 

発行した請求書に間違いが!そんなときどうすれば?

発行した請求書に誤りが見つかった場合、それが送付前であれば、二重線と訂正印による「訂正」ではなく、正しいものを「再発行」するようにしましょう。

万一送付後に誤りに気付いてしまった場合には、直ちにその取引先に謝罪した上で破棄をお願いし、お詫び状とともに正しい請求書を送付するようにしてください。

もし請求ミスによって誤った代金を受け取ってしまった場合には、一度返金処理を行うかどうかなど、今後取るべき対応を取引先へ伺うようにしてください。
 

消費税免税事業者でも消費税分を請求して良いの?

消費税の納税義務がないにも関わらず、請求書に消費税を計上して良いのか疑問に思うこともあるでしょう。

こちらの回答としては、2020.11月時点では消費税を計上して問題ありません

しかし2023年に予定されているインボイス制度が導入された場合、消費税の課税事業者でないと消費税分を上乗せして請求できなくなってしまいますので、その点もぜひ抑えておきましょう。
 

 
 

請求書発行のおすすめツール

それでは実際に請求書を作成する場合、どのようなツールで作成を行えば良いのでしょうか?

Excelのフリーフォームを使用することも可能ですが、今回お勧めしたいのは請求書作成用の“クラウドサービス”の活用です。クラウドサービスにより請求書を作成することで、以下のようなメリットが生まれます。

クラウドサービスで請求書を作成するメリット

取引先データの保存や自動計算システムが備わっていることで、作成の所要時間が短縮でき、ミスも起こりにくい
 
クラウド上にデータが保管されるため、パソコンが故障してもデータ損失のリスクがない
 
クラウド会計と自動連携すれば、会計処理も簡単

現在、数多くのクラウドの請求書作成サービスが存在する中で、コスト面や利便性からフリーランスの利用者が多いサービスには以下のものが挙げられます。

マネーフォワードクラウド請求書
freee
Misoca
board

これらのサービスの中にはひと月あたりの作成件数によって無料で使えるもの、自動郵送や自動メール送信機能が備わったものなど、利用料金以外にもサービス内容に多少の差異がありますので、無料のお試し期間等を活用してご自身に合ったものをお選びください。

ちなみに筆者である私は当初Misocaというサービスを無料で利用していましたが、Misocaで用意されている請求書では、前月からの繰越残高を載せる機能が備わっていなかったため、クラウド会計として利用していたマネーフォワードクラウドへ、請求ツールも一本化することとしました。

私のケースはあくまで一例ですが、実際に使用してみて初めてわかるメリット・デメリットがあるでしょうから、ぜひ様々なサービスをお試し頂ければと思います。
 
 

まとめ

今回は請求書の発行方法と発行するタイミング、お勧めする作成ツールについて解説しました。

冒頭でもお伝えした通り、請求事務は取引先との良好な関係を維持するための非常に重要なステップとなりますので、受け取る相手方への配慮を忘れないように心がけましょう。
 

服部大
この記事を書いた人

服部大

2020年2月、30歳のときに愛知県名古屋市内にて税理士事務所を開業。
 

平均年齢が60歳を超える税理士業界内で数少ない若手税理士として、同年代の経営者やフリーランス、副業に取り組む方々にとっての良き相談相手となれるよう日々奮闘している。
 

顧問業務だけでなくスポットでの税務相談や執筆活動も行っており、「わかりにくい税金の世界」をわかりやすく伝えることができる専門家を志している。
 
> 服部大税理士事務所