「会社が嫌だ」「やりたい仕事がある」「もっと自由に働きたい」。
そう思ってフリーランスへの転向を考える方は多いでしょう。その際にネックになるのは「収入面」ではないでしょうか?
一般的に会社員には一定の給与収入が約束されています。一方でフリーランスは収入が不安定になりがちです。
テレビや雑誌では「フリーランスで年収1,000万円」という事例が取り上げられますが、アルバイト程度という話もよく聞きます。
そこで今回は平均年収など、フリーランスのリアルなお金事情を取り上げます。独立する前にぜひ読んでみてください。
▼ 目次
1. フリーランスの平均年収はいくら?
1-1. タイプ別、フリーランスの平均年収
1-2. 年収が高いフリーランスの職種とは?
1-3. 競争激化、同じ職種でも稼げる・稼げないが分かれる
2. 会社員とフリーランス、どっちがいい?
2-1. 会社員とフリーランスの平均年収比較
2-2. 安定の会社員vs不安定のフリーランス、それでもフリーを選ぶ理由
2-3. 経費は?社会保険料は?フリーランスのお金事情
3. フリーランスが収入をアップさせるために必要なこと
3-1. 収入アップのためにすべきこと
3-2. フリーランスは保障が手薄、貯金と投資は考えよう
4. まとめ
フリーランスというと低収入のイメージがあるかもしれませんが、会社員を上回る収入がある人は少なくありません。
では実際どうなのか、まずは気になる収入面を見ていきましょう。
会社員と同様、フリーランスも業界や職種、働き方によって収入に大きな差が生じます。
フリーランスには大きく分けて「独立系」と「副業系」の二種類の働き方があります。「独立系」は特定の会社との雇用関係はなく、個人事業主や法人の形態で業務を請け負って働いています。主な収入源はフリーランスとしての仕事です。
一方で「副業系」は特定の会社の正社員や契約社員などとして働きながら、本業とは別に仕事を請け負って、本業の終業後や休日に働いています。
一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の「フリーランス白書2020」によると、一般的な会社員と同程度である「月140時間以上」働いているフルタイムのフリーランスと、140時間未満のフリーランスの年収は次のようになっています。
年収 | 月140時間未満 | 月140時間以上 |
---|---|---|
200万円未満 | 36.9% | 8.4% |
200〜400万 | 23.8% | 22.0% |
400〜600万 | 17.0% | 22.7% |
600〜800万 | 7.8% | 15.4% |
800万〜1,000万 | 7.1% | 12.9% |
1,000万円〜1,200万 | 3.2% | 5.6% |
月140時間未満 | |
---|---|
200万円未満 | 36.9% |
200〜400万 | 23.8% |
400〜600万 | 17.0% |
600〜800万 | 7.8% |
800万〜1,000万 | 7.1% |
1,000万円〜1,200万 | 3.2% |
月140時間以上 | |
200万円未満 | 8.4% |
200〜400万 | 22.0% |
400〜600万 | 22.7% |
600〜800万 | 15.4% |
800万〜1,000万 | 12.9% |
1,000万円〜1,200万 | 5.6% |
このように就業時間が月140時間未満だと年収200万円未満が最も多く、36.9%を占めました。
他方で月140時間以上だと年収400〜600万円が最も多く、全体としてみても半分以上が年収400万円以上でした。3割は400万円以下ですが、1,000万円以上稼いでいる方も少なくありません。
同様の調査はほかにもありますが、調査手法などが違うため「平均年収は300万円台」とするものもあります。
上記の結果からフリーランスの年収にはかなり幅があるとわかります。ではどういった職種で年収が高い傾向にあるのでしょうか。
フリーランス白書2020によると、年収800万円以上は主に次のような職種でした。
エンジニア・技術開発系 | 29.8% |
---|---|
コンサルティング系 | 22.6% |
クリエイティブ・Web・フォト系 | 12.1% |
企画系 | 10.5% |
出版・メディア系 | 6.5% |
「エンジニア・技術開発系」と「コンサルティング系」は近年売り手市場が続いています。特にITエンジニアは日本のみならず世界でも高収入の職業です。
より具体的な需要のある仕事と平均年収については、別に記事にしていますので、こちらを参考にしてください。
一口にフリーランスといってもITエンジニア、写真家、ライター、翻訳家などさまざまな職種があり、収入に大きな差があります。
また同じ職種の中でも需要の差によって収入にも差が生じます。
例えば“稼げる”と言われるエンジニアでも、システムエンジニア、ネットワークエンジニア、フロントエンドエンジニアなどの種類があり、それぞれ報酬が異なります。
「エンジニアは稼げる」という話が知られるようになり、IT関連の専門学校では入学者が増えているという話も聞かれます。
ただ企業は経験者を求めているため“できるエンジニア”には仕事が集中する一方、未経験では思ったように稼げないと感じている方も多いはずです。
これはライターでも同様です。1件10万円で仕事を請け負うライターがいる一方、文字単価1円以下で働くライターも多数存在します。
分野によっては競争が激化しているとも感じます。
フリーランスの収入を考える際には「どういった職種の収入が高いのか」ということ以外に「どういったスキルがあれば収入が高くなるのか」、「需要が高い分野はどれか」といった点も確認しておきましょう。
副業の解禁など労働関連で大きな動きが続いています。
会社員からフリーランスへの転向を考えている方もいると思いますが、両者には安定性や金銭面で違いがあります。
まず会社員とフルタイムのフリーランスの平均年収を比べてみましょう。
なお両者とも職種や雇用形態によってかなり収入が違い、単純比較はできないので、あくまで参考値と認識してください。
国税庁が公表している平成30年の「民間給与実態調査結果」によると、会社員の平均年収は以下の通りです。
会社員全体 | 441万円 |
---|---|
男性 | 545万円 |
女性 | 293万円 |
業種別では高い順に「電気・ガス・熱供給・水道業」759万円、「金融業・保険業」631万円、「情報通信業」622万円でした。
前述したように、フルタイムのフリーランスは半分以上が400万円前後ですので、会社員とフリーランスは収入面では同程度といえるでしょう。
フリーランスと会社員は収入面では同じくらいだとしても、フリーランスには不安定さがつきまといます。
実際フリーランス白書2020でも、55.1%が働き方の課題として「収入がなかなか安定しないこと」をあげています。
一般的にフリーランスは業務委託で働いており、案件ごとに仕事を請け負います。そのため案件の数や単価により、毎月の収入が変動します。季節や社会情勢の影響を受ける業種も多く、ボーナスもありません。
またケガや病気で働けなくなれば収入が途絶えるおそれもあります。
多くの会社員は毎月一定の給与が支給されており、各種手当も加算されます。それに比べるとフリーランスはやはり不安定です。
その一方で働き方への満足度は高く、フリーランス白書2020でも「非常に満足」「満足」が83.6%を占めました。
またフリーランスを選んだ理由も「自分の裁量で仕事をするため」が56.0%、「働く時間/場所を自由にするため」が50.2%、「より自分の能力/資格を生かすため」43.3%でした。
自分の裁量で仕事ができるメリットは大きく、筆者の周囲でも「この働きやすさを知ってしまうと、もう会社員には戻れない」という声をよく聞きます。
加えてコロナ禍による企業の業績悪化で解雇や給与引き下げが相次いでおり、会社員の「安定性」にも大きな疑問符がついています。
今後フリーランスを目指す方はますます増えると考えられます。
筆者は家庭の事情からフリーランスになりました。仕事の内容や働き方の自由度が高い点は満足していますが、「いつ仕事がなくなるかわからない」という不安は常につきまといます。
人によって働き方が合う・合わないもあると思いますので、フリーランスになりたい方は、まずは情報を集めてみてくださいね。
フリーランスとして働く際に気を付けたいのが出費です。
フリーランスは社会保険などの保障が手薄です。会社員は健康保険も厚生年金も会社と折半ですが、フリーランスは国民健康保険と国民年金が全額自己負担です。
交通費や通信費などの経費もかかるほか、業種や売上額によっては個人事業税や消費税もかかります。
そのため会社員と同程度の収入・売上があっても、最終的に手元に残る金額は会社員よりも少なくなります。
手取りを減らさないためには、会社員時代よりも多めに稼ぐことを考えましょう。なお会社員と違って事業の経費にできるものも多いので、適切に活用してください。
フリーランスの方には「思っていたより稼げない」「収入が上がらない」と悩んでいる方も多いでしょう。
そこで収入アップのために何をすればいいのか、筆者の経験と合わせてご紹介します。
収入をアップさせるためには次のような対応をしましょう。筆者も実践しています。
当たり前のことですが、働く時間が増えればできる仕事の量が増え、収入はあがるでしょう。本業の仕事が少ない場合には、できた時間で副業ができます。
もちろん、これは睡眠時間を削るという意味ではありません。
ダラダラとネットを見ない、夜型から朝型に切り替える、時短家電を取り入れるなど、生活を見直して1日30分でも作業時間が増やせれば、5日間でプラス2時間半も仕事ができます。
労働時間は変わらなくても、より報酬の高い仕事を受ければ収入はアップします。
最初は低単価の仕事でも、ペースがつかめたり専門知識がついたりしたら、より高い報酬の案件を探しましょう。
たとえばライターの場合は、クラウドソーシングだけでなく求人サイトや各媒体の採用ページにも募集情報が掲載されていることがあります。少しレベルの高い仕事にも挑戦してみてください。
報酬の高い仕事を受けるためには専門性を身につけることも大事です。
高い専門性・スキルがある人には、良い条件が提示されます。AI関連技術など、需要の高いスキルを学んで報酬アップを狙うのも良いでしょう。
そのためには社会の変化に敏感になること、最新の情報を収集することも大事です。
前職でのつながりを生かす、フリーランス同士で交流するなどして人脈が広がれば、良い仕事に出会える確率が高まります。
TwitterなどのSNSを積極的に活用したり交流会に参加したりするなどして、一歩踏み出してみてください。
筆者の経験でもクラウドソーシングで探した仕事よりも、クライアントから紹介された仕事の方が報酬は高い傾向にあります。良い仕事をすれば別の仕事を紹介してもらえて良い循環が生まれます。
フリーランスとして信用度をあげることも大事です。
フリーランスは個人の看板で勝負しなければいけません。クライアントの予想以上の仕事をすれば口コミが広がる一方、適当な仕事をすれば悪いうわさが広がります。
信用度があがれば、報酬の高い仕事や大型案件が舞い込む可能性は高まります。個人HPの解説やSNSを活用してセルフブランディングするのも良いでしょう。
筆者も独立当初は仕事の探し方がわからず、文字単価1円以下という低報酬の仕事もかなりやりました。
ただ次第に仕事の探し方がわかり、情報や人脈を得たことで、低報酬の仕事から脱することができました。また家事や育児の時間の使い方を見直したことで、毎日一定の作業時間を確保できています。
収入をアップさせるために徹夜など無理をして働くことがなくなったため、精神的にも体力的にも楽になりました。
効率的に仕事ができるようになって家族と過ごす時間が増えたほか、自己肯定感も増したように思います。
フリーランスとして独立してすぐに、高収入が得られる方は多くありません。
そのためフリーランスになる際には、収入が少なくてもしばらく生活していけるだけの蓄えを持っておきましょう。蓄えがない場合には、仕事が軌道に乗るまではアルバイトと掛け持ちするという手もあります。
またフリーランスは社会保障が手薄な一方出費が多いので、民間の保険に加入するなども検討してみましょう。
貯蓄に余裕がでたら、iDeCoや小規模企業共済に加入する、NISAやつみたてNISAなどを活用した投資も考えましょう(一定のリスクはあります)。
仕事用の出費の経費計上、青色申告特別控除を活用した節税対策も大事です。
フリーランスは柔軟な働き方ができるなどのメリットが大きい一方で、収入面での不安もあります。
思いつきで会社を辞めるのではなく、ある程度の貯金をする、自分にあった職種を探すなど、計画を練っておくことをおすすめします。
にしみねひろこ
フリーライター。6年半の報道記者経験を活かして、インタビューや各種コラム、取材、企画・広告記事、プレスリリースなどを執筆している。主な執筆分野は法律、医療、経済、人事、子育て・生活。
> ライターにしみねひろこWEB