社会保険の加入は義務であり、一般的には、国民健康保険に加入ということになります。
社会保険を後回しにした結果、病気になっても健康保険を使えなくなり、年金がもらえなくなる恐れがあるのです。退職の翌日からは「会社の健康保険」は使えないのです。
本記事では、個人事業主・フリーランスの社会保険について、お得に社会保険に加入する方法も含めてご紹介します。
▼ 目次
1. 個人で加入できる社会保険は介護保険も含めて4種類ある!
2. 健康保険と国民健康保険
2-1. 健康保険の任意加入制度に加入
2-2. 国民健康保険に加入
2-3. 家族の健康保険の扶養家族として加入
2-4. 個人事業で従業員を雇用する場合は?
3. 国民年金
3-1. 国民年金に加入する方法
3-2. 国民年金の保険料はいくら?
3-3. 国民年金はいつから、いくらもらえるの?
4. 労災保険の特別加入制度
4-1. 労災保険に加入できるのは?
4-2. 労災保険の加入方法は?
4-3. 労災保険の保険料は?
4-4. 労災保険はいくらもらえるの?
5. 介護保険
5-1. 介護保険の保険料の徴収は?
5-2. 介護保険の保険料はいくら?
5-3. 介護保険の給付内容とは?
5-4. 介護保険サービスを受けるときの自己負担は?
6. まとめ
起業した場合、本人はもとより個人事業主の配偶者や家族も退職前の会社の健康保険はもう使えませんから、医療保険に加入しなければなりません。40歳以上であれば介護保険にも加入しなければなりません。(これは義務なのです!)
また、国民年金にも加入しなければなりません。
一方、失業しても失業給付はもらえませんし、労災保険にも加入できません。
なお、個人事業主に雇用されている従業員は、業種などにより健康保険や厚生年金に加入できる場合がありますし、雇用保険、労災保険にも加入できます。
病気や仕事中にケガをした際、健康保険や労災で治療を受けられず実費負担となるリスクを少しでも減らすために、個人で加入できる4種類の社会保険について説明しましょう!
従業員のいない個人事業主やフリーランスは、普通なら国民健康保険に加入となるのですが、ちょっと待ってください!
国民健康保険は1年前(会社在籍時)の給料をもとに保険料が計算されるため、起業1年目の国民健康保険はけっこう保険料が高いのです。
実は、起業後の医療保険には以下の3つの医療保険のどれに加入するか選べるのですが、年収130万に満たないというなら保険料のかからない「家族の健康保険の扶養家族として加入」、それ以上の可能性があるならお得に加入できる「健康保険の任意加入制度」に加入がお勧めです。
起業直後でない場合は、「国民健康保険」または「家族の健康保険」2つの医療保険から選択することになりますが、年収130万に満たないというなら保険料のかからない「家族の健康保険」に加入がお勧めです。
これまでの会社員時代に加入していた健康保険(健康保険組合の場合も含む)に個人で加入することができる制度のことで、この制度を任意継続制度といいます。
お住いの区市町村の国民健康保険(※1 国民健康保険組合も含む)に加入する方法です。
もし、どちらにも加入できるのなら、保険料も安く給付内容も良い国民健康保険組合に加入するほうがお得です。
※1 国民健康保険組合は、建設業、飲食業、医師、税理士、などの業種単位で構成されていますが、すべての業種に健康医保険組合があるわけではありません。なお、フリーランスの場合は「文芸美術国民健康保険組合」に該当する方も多いようです。
ご家族で会社員の方がいて、社会保険に加入している場合に、その扶養家族として認定してもらう方法です。扶養家族として認定されれば、健康保険料はかかりません!(無料です)
いかがですか?
詳しくは、「独⽴したらまず⼿続き! 個⼈事業主が加⼊できる健康保険と節税⽅法」をごらんください。
あなたが個人事業主で従業員を雇用する場合は、業種と従業員数により加入義務のある健康保険の制度が異なります。
従業員4人までの個人事業、または5人以上であっても「クリーニング業」「飲食店」「ビル清掃業」などの事業主および従業員は、それぞれ健康保険、国民健康保険、家族の健康保険の扶養家族から選択して加入しなければなりません。
従業員5人以上の個人事業に雇用されている従業員は、社会保険加入義務があります。(上記を除く個人事業主の場合)
事業主は健康保険、国民健康保険、家族の健康保険の扶養家族から選択して加入することになります。
個人事業主、フリーランスの場合は、国民年金に加入しなければなりません。配偶者も厚生年金に加入していない場合は、国民年金に加入しなければなりません。
ご本人(または世帯主)が、お住いの市区役所または町村役場に「年金手帳または基礎年金番号通知書」を添付して申請します。提出期限は、退職日の翌日から14日以内です。
令和2年度は、月額16,540円です。(令和3年度は16,610円を予定)
国民年金保険料は、口座振替のほか現金及びクレジットカードでも納付できます。また、国民年金の保険料は、まとめて前払いするとお得になります。
国民年金は、年を取ったときにもらう老齢基礎年金のほか、障害者になったときの障害基礎年金や亡くなった遺族に支給される遺族基礎年金の3種類あります。
老齢基礎年金は、保険料納付済期間と保険料免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上ある場合に、65歳から受け取ることができます。
また、20歳から60歳まで40年間保険料を納めた場合には年金は満額受け取れます。40年に満たない場合は、減額した年金が受け取れます。
国民年金満額 = 781,700円(≒月額換算 65,141円)
(20年間保険料を納めた場合は781,700円 × 20年/40年 = 390,850円)
障害基礎年金は、国民年金に加入している間、または20歳前(年金制度に加入していない期間)、もしくは60歳以上65歳未満(年金制度に加入していない期間で日本に住んでいる間)に、初診日のある病気やケガで、法令により定められた障害等級表(1級・2級)による障害の状態にあるときは障害基礎年金が支給されます。
1級 年金額 | 781,700円×1.25+子の加算(※3) |
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2級 年金額 | 781,700円+子の加算(※3) |
※3 子の加算は以下のとおり
第1子・第2子 | 各 224,900円 |
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第3子以降 | 各 75,000円 |
遺族基礎年金は、国民年金の被保険者等であった方が受給要件を満たしている場合、亡くなられた方によって生計を維持されていた「※子のある配偶者」または「子(前述の条件)」が、受け取ることができます。(※18歳未満または20歳未満で障害年金の1級あるいは2級を受けていることが条件)
年金額 | 781,700円+子の加算(※3) |
---|
※3 子の加算は以下のとおり
第1子・第2子 | 各 224,900円 |
---|---|
第3子以降 | 各 75,000円 |
労災保険は、仕事中のケガなど(業務災害)や通勤途中の負傷など(通勤災害)に対応するために国がつくった制度です。
この制度には特例があり、一人親方や中小事業主(従業員を雇用している個人事業主も含む)でも労災保険に加入できる制度があります。この制度のことを「労災保険の特別加入制度」といいます。
労災保険に加入できるのは、一人親方(常時一人で仕事をしている者)で特定の事業を行っている者、もしくは中小事業主です。
・個人タクシーや個人貨物運送業者 など
・大工、左官、とび職人 など
中小事業主は、業種制限はなく、労災保険に加入できる事業であれば加入できますが、中小企業であることが要件となります。
中小事業主とは、わかりやすく言えば、下記の表に定める数の労働者を常時雇用する事業主です。(法人の場合は代表者、個人事業の場合は事業主)
金融業、保険業、不動産業、小売業 | 従業員50人以下 |
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卸売業、サービス業 | 従業員100人以下 |
その他の業種 | 従業員300人以下 |
一人親方の場合、「一人親方特別加入制度」に加入します。一人親方労働保険事務組合を通じて手続きができます。
中小事業主の場合は、「中小事業主特別加入制度」に加入します。労働保険事務組合を通じて、管轄の労働基準監督署にて手続きができます。
(詳しくは、WEBで「特別加入」で検索してみてください。)
労災保険の保険料は、1日あたりの希望の補償額×365日×特別加入の料率で計算します。
まず、1日当たりの希望補償額(給付基礎日額)は、3,500円~25,000円の中で自由に選択することができます。
次に、特別加入の料率は一人親方の場合と中小事業主の場合とで制度が異なります。
一人親方の場合は、現在のところ個人タクシーの料率は12/1000、大工やとび職人の料率は18/1000と決められています。
給付基礎日額10,000円の個人タクシーの場合の特別加入の年間保険料は、10,000円×365(日)×12/1000=43,800円。
年間43,800円の保険料となります。
労災保険の補償には、治療費、休業補償、障害補償、遺族補償などがあります。治療費は、労災指定病院などで必要な治療が無料で受けられます。
休業補償は、傷病のため働くことが出来なかった日が4日以上となった場合に給付基礎日額の80%(特別支給金20%を含む)が支給されます。
給付基礎日額が10,000円で加入した場合は、1日8,000円支給されます。
障害補償は、傷病が治った後に障害等級第1級から第14級までの障害が残った場合に年金または一時金が支給されます。
給付基礎日額10,000円で障害等級1級だと、3,130,000円の年金と3,420,000円の特別支給金が支給されます。
遺族補償は遺族の人数等により年金が支給されます。
給付基礎日額10,000円で遺族4人の場合だと、2,450,000円の年金と3,000,000円の特別支給金が支給されます。
その他の給付として葬祭料(葬祭給付)および介護(補償)給付などがあります。
介護保険の運営主体は全国の市区町村で保険料と税金で運営されているため、40歳になれば、加入が義務付けられ保険料を支払わなければなりません。(死亡するまで)
介護保険料は、40歳から64歳までだとご本人(または世帯主)が加入の健康保険または国民健康保険から、その保険料に合算して徴収されます。
65歳以上になれば、原則としてもらっている年金からの天引きで市区町村が徴収します。
介護保険料率は加入している医療保険によって異なり、保険料も同様です。
介護保険サービスは、居宅サービス(訪問介護など)、施設サービス(生活介護など)、地域密着型サービス(生活支援など)の3つに分類されます。
介護保険サービスを受けるには、原則「1割の自己負担」が必要です。ただし、前年度の所得に応じて、自己負担が2割あるいは3割になります。
なお、介護保険の給付を受けるためには、要介護認定をしてもらう必要があります。
個人事業主(フリーランス含む)の場合は、加入できる社会保険は4種類あります。(40歳未満は介護保険の適用外のため3種類)
これらに、賢く加入することにより自身の健康や老後のためのセイフティネットとなりますので、最重要なこととして取り組みましょう!
竹谷保宣
社会保険労務士(平成元年~)。RSTトレーナー。特定社会保険労務士
【指導実績】
就業規則関連…約600社。社会保険手続…約1500社。スタートアップ企業や個人事業主様から上場企業まで、あらゆる分野の企業様を社会保険、労務面、助成金、給与計算などご支援させていただいております。
【著書】
「労働トラブル110番(医療・介護業界編)」平成出版
「従業員を採用するとき読む本」あさ出版
【スタッフ構成】
社会保険労務士 7名、スタッフ 13名の計20名
【事務所】
社会保険労務士法人ベスト・パートナーズ
<東京事務所>
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