個人事業主の商号登記とは?屋号の登録のために必要な申請について解説
個人事業主が事業を始める時には、法律上で義務とされている「開業届」の提出と、義務ではなく任意で行える「商号登記」があります。この記事では開業届、商号登記について説明します。
個人事業主に提出義務があるのは開業届
個人事業主として開業する際には、事業開始から1カ月以内に開業届を税務署に提出が必要です。正式名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」といい、所得税法で提出を義務付けられています。
開業届を提出すると、小規模企業共済への加入や所得税の青色申告ができるようになります。青色申告で確定申告できるようになると特別控除最大65万円や家族への給与を経費処理が可能になり、白色申告より課税所得を減らすことができることが特徴です。
また事業の収支を管理しやすくするために、屋号(個人事業における商業上の名前)名義での銀行口座の開設やクレジットカードの作成にも開業届の提出が必要になります。
屋号とは、個人事業主が事業を行う際に使用する商業上の名称のことです。法人の社名に相当するもので、個人事業主の本名とは別に、事業内容や特徴を表現した名前を使用することができます。屋号は取引先や顧客に対して事業のイメージを伝える役割となるため、名刺やウェブサイト、請求書などにも使用されます。ただし、屋号は法人名とは異なり、登記する必要はありません。
開業届について詳しくは『事前にチェック!フリーランスの開業届の書き方と注意点』をご確認ください。
商号登記は屋号を法的に保証するための申請
商号登記は事業を将来的に法人化した際に、個人事業主で運営していた時と同じ屋号を確実に使えるようにする申請です。
個人事業主は、自分が使う屋号を法務局に商号登記することで屋号に法的拘束力をもたせることができます。屋号の取得自体は税務署に提出する開業届や確定申告の書類に記載することで取得できます。
しかし、税務署への提出書類のみでは法的には保護されません。他人が類似した名前の会社を作った場合、法人化の際に屋号を変更しなければならない恐れがあります。
商号登記は、こういった自体を未然に防ぐために行う申請です。開業届けと違いあくまで商号登記を自主的に行うもので法律上の義務はないことが特徴です。
商標登録との違い
商号登記と似た申請として、商標登録があります。商標登録と商号登記の違いは申請の目的と管轄する省庁です。
商号登記は個人事業主が商業上で使用する屋号を商号として登記するもので、管轄は法務省となるのに対して、商標登録は事業主全体ではなく自分の商品やサービスに対するライセンス(特許)申請のことで、特許庁が管轄しています。
商標登録について詳しくは『商標登録は個人事業主とフリーランサーこそ必要』の記事をご覧ください。
商号登記の手続き方法
商号登記の申請手続きは、法務局の窓口、または、オンラインで行えます。
個人事業主の商号登記の手続きに必要なもの
個人事業主の商号登記に必要なものは以下です。
・個人の実印
・個人実印の印鑑証明
・印鑑届出書
・商号登記申請書
・登録免許税3万円
・ある場合は屋号印、商号印
個人事業主本人の実印と印鑑証明書は必須です。実印の印鑑登録は事前に済ませておきましょう。
屋号印(商号印)がある場合は準備しましょう。商号登記に関する印章の届出は、個人の実印で申請できます。もしあれば屋号印・商号印も持っていきましょう。
商号登記申請書には指定のフォーマットはありません。インターネットでひな形を見つけて使用するのが基本になっています。法務局に行く場合でもこの書類は自分で記載することになるため、ひな形をダウンロードしてプリントし、事前に記載しておきましょう。
記載事項は、登記事項である商号、営業所の住所、事業主の住所、事業主の氏名、営業の種類(事業として行うことは何か)、日付などになります。
オンラインでの個人事業主の商号登記の手順
オンラインでの個人事業主の商号登記の手順は以下の通りです。
(1) 商号登記申請書の情報をデータで作成
(2) (1)に添付書面情報を添付(個人実印の印鑑証明書など。pdf形式で保存)
(3) (1)(2)を登記・供託オンライン申請システムにデータ送信
(4) PC上に申請データ受付のお知らせが届く
(5) 登録免許税を納付(電子納付、領収証書、印紙納付のいずれか)
(6) 不備がある場合は補正または取下げ/不備がなければ完了
オンラインでの個人事業主の商号登記に必要なものなど、詳細は法務省のウェブサイトをご参照ください。